吉野孝公『騰越玉砕記』を読む:『慰安婦と兵士の愛と死』のさらなる増補改訂に向けて―補記

1.  丸山は「この戦記の反響をかれはつゆだに計算しないが、玉砕という二字の内側で人間が最高に人間であった記録として、読者の胸に深く感動の釘を打ちこむことは必定である。しかし、そういう意味づけをおしつけないところに吉野戦記の真骨頂がある」と結ぶ(p.3)。 2.  吉野は脱出の中で地元の「老人」や「老婆と若い女」に二度も助けられた…

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吉野孝公『騰越玉砕記』を読む:『慰安婦と兵士の愛と死』のさらなる増補改訂に向けて

1.  吉野孝公『騰越玉砕記』は品野実氏が紹介してくれた。貴重な文献なので借りず、私は大急ぎで目を通し、重要と思ったことをメモした。  ところが、そのメモの所在が分からなくなった。  『アイデンティティと戦争』の出版は助成金の関係で期限が迫り、参考文献として挙げるだけしかできなかった。しかも、その後、様々に忙殺され、『騰越玉砕記』…

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講義のために0711

1.  アイデンティティの形成・再形成……  習得した“力”は、次に使わねばならない。そこにおいて新たなチャレンジが出てきて、新たなクライシスに直面する。  変化が加速する時代において、これは尚更である。 2.同一性と自己変革 2-1.  エリクソンと同時代のロバート・リフトンは「プロテウス的人間」を提起…

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南隆「元警察庁幹部が見た『天安門事件の夜』」を笠原直樹「防衛駐在官メモ」と組み合わせて読む

1. 南隆「元警察庁幹部が見た『天安門事件の夜』」が『文藝春秋』2021年8月号に掲載されている。  当時の状況は前掲「防衛駐在官メモ」(「時事通信」2019/5/29(水) 7:07配信)と重なり合う。両者を組み合わせると、より深い認識が得られる。  そして、南は以下のように分析を進める。 「天安門事件に酷似する香港鎮圧」 …

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叢書「生涯学習」(雄松堂)に向けての歩み(ノート)5

9月5日  学会の大会に向けた理論研究部会に出席した。  現代(当時として)の学習内容がテーマになっていたが、学習内容の「系統化」、「組織化」に関する発言が多く、山田は「それは内容ではなく、方法ではないか」と問いかけた。  そして、systemからnetworkingへという状況に応じたlearning webはnonformal…

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叢書「生涯学習」(雄松堂)に向けての歩み(ノート)4

 1986年1月8日、9日の二日かけて、社全協の部屋で「生涯教育と社会教育」をテーマに座談会が開かれ、参加した。その一部が「座談会:国民の生涯学ぶ権利をどう保障するか」『月刊社会教育』1986/昭和61年3月号に掲載された。  主席者の小川利夫、長沢成次は明確に社全協の立場であり、伊藤長和は所属していた政令指定都市研究会の立場からと聞…

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『慰安婦と兵士の愛と死』の補記

 綏芬河第二国境守備隊(第二二九部隊)の陸軍病院を中心とした戦友会誌『綏陽』では、表通りに「慰安所」、裏通りに「満人遊郭」、「鮮人娘売春窟」など位置関係を示す「略図」がある。これに関して『慰安婦と兵士の愛と死』の補記として添付する。『慰安婦と兵士の愛と死』の補記.pdf  これを記録した関係者の方々から貴重な証言をいただいた。『慰…

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叢書「生涯学習」(雄松堂)に向けての歩み(ノート)3

1986年10月3日  ジェンダーについて「人類史」を見渡して考えることに触発されて、教育史を専攻する院生たちと話しあった。  教育が制度化される前、文化の伝播として、神話や伝説の口承があり、それが古代ギリシャ・ローマでは儀式と娯楽に組み合わされて演劇が生まれた。その後、教会の建築が発展すると、聖画やステンドグラスによる聖書の説明も…

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『黒死病』の中の「凍った河」に登場する少女について

 「図書新聞」のためには、長い引用は控えるべきだが、求められたので、、、  ・・・(開拓団から避難した)彼女の一家は飢え、弟は肺炎で危篤に陥った。娘は畑で働く三森(雑誌の編集・著述者)に声をかけると「馬鈴薯を掘ってもっていってもいいよ」と言われ、感激し、「どうも、ありがとう、おじさん、……こんなに食べものをいただいて、……そのかわ…

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『黒死病』(不二出版)を読み『慰安婦と兵士の愛と死』を思わされた

 「図書新聞」2021年7月3日号に「外の現象と内の心理の絡みあい:書評『黒死病』(不二出版)」を寄稿。  細菌戦が主要だが、飢餓に苦しむ少女が食べ物の代価をからだで払おうとする。私は「汝らのうち、罪なき者、まず石をなげうて」を引いた。  この捉え方は小著『慰安婦と兵士の愛と死』(小著)に通じる。  書評の結びでは「読者の力量が問…

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叢書「生涯学習」(雄松堂)に向けての歩み(ノート)2

 今年の2月28日に「叢書「生涯学習」(雄松堂)に向けての歩み1」を書いた。  だいぶ間があいたが再開。 1986年6月14日  社会教育基礎理論研究会  以下の構成で研究をまとめることが話しあわれた。  「領域別」:「青年」、「労働者」、「婦人」、「高齢者」、「住民」、「農民」の「社会教育実践」  その分析の「視点」や…

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P-D-Cの三重のサイクルからトリプル・スパイラル学習へ

 1986年10月5日  企業を横断した自主的な「サラリーマンの勉強会」で、自律的作業集団に即してリーダーシップとチームワークに関して報告した。  そこで得られた知見は、1991年に学文社から出版された倉内史郎編『社会教育計画』の「成人の学習をすすめるうえの方法・技術:公共的テーマの学習をめぐって」に組み入れた。  しかし、P-D…

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プラグマティズムやデューイの再考:ラディカル・リベラリズム、ラディカル・エンピリシズムとして

 プラグマティズムは実利主義と見なされることが多いが、 1.  サヴィチェヴィチ・ベオグラード大学教授(当時)は「もっとデューイを理解しなければならない。プラグマティズムは実利主義ではない」と語った。 2.  確かに、プラグマティズムを「青年ヘーゲル派の見失った支脈(a missing branch of Young Hegel…

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「知識労働」、「精神的労働」の論-1960-80年代の日本で―

「知識労働」、「精神的労働」の論  脱工業(産業)化や情報化の進展に対して、マルクス主義から「知識労働」や「精神的労働」が提出された。前者では山口正之は『マルクス主義と産業社会論』(新日本新書、1969年)の後に『現代社会と知識労働』(新日本新書、1972年)を出版した。  後者について、芝田進午の以下の編著がある。 ・『…

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日本におけるコンドルセへの注目―宮原の「生涯学習」論―

 波多野からは『続・生涯教育論』(小学館、1985年)を通して先述のセーヴ、そしてクロード・デュバールについて教えられた。セーブが心理学でデュバールが教育学という組み合わせで、波多野はセーブを踏まえてデュバールの見解を紹介した。  また、波多野はジャック・アルドワノ『現代教育論:成人教育のための』(理論編・応用編の全二巻、岸田秀、久米…

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自由な全面発達と生涯教育:マルクス主義の止揚のために:ニコラ・ド・コンドルセへの注目

 カントは現場から遠く離れたケーニヒスベルクの書斎で暴力革命や民主独裁を説いた。  ニコラ・ド・コンドルセは、暴力革命の現場で人間精神の進歩を論じ、そのための教育改革を提案したが(以下の文献を参照)、独裁政権の犠牲となった。 ・『革命議会における教育計画』渡辺誠訳、岩波文庫、1949年 ・『人間精神進歩の歴史』前川貞次郎訳、創…

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盛田嘉徳文庫目録(1)大阪府立大学史資料叢書Ⅱについて

 盛田嘉徳文庫研究会の代表として編集した。森田の部落差別への鋭い問題意識、同和教育の実践が、幅広い知識・教養、深い研究成果を基盤としていたことを、彼の解説、講演、評論、名刺帳などを整理して明らかにした。また収集した文献の一部を目録にまとめた。公刊された講演などに朱書きが加えられており、学者として真摯で厳密な研究姿勢が認められる。

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『盛田嘉徳文庫目録(2)大阪府立大学史資料叢書Ⅲ』を公刊

 『盛田嘉徳文庫目録(1)大阪府立大学史資料叢書Ⅱ』を発展させた研究成果である。盛田嘉徳の研究カードに基づき、家永三郎や丸山真男の日本思想史研究とは異なる低層の民衆に即した日本思想史の一面を提出した。特にカードが「高野山の行人/念仏衆」、「悪僧」、「濫僧」、「乞食法師」、「越打(エタ)」、「川原者」、「皮革」、「御庭者」、「とうない」、…

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「ヒューマニズムに関する手紙」で「故郷喪失の運命」を書く神経 ナチはどれだけ故郷を喪失させたか ハイデガーの度はず…

1.  ハイデガーは「ヒューマニズムに関する手紙」において「故郷喪失の運命」と 書いた。 2.  彼はナチ党員であった。 3.  ナチはどれだけ故郷を喪失させたか?! 4.  知らないわけがない。  それなのに「ヒューマニズム」や「故郷喪失の運命」を書いた。 しかも自分は故国で名利を享受していた。 5.  彼…

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