社会教育の経営・生涯学習の支援のために(ノート)改稿1

社会教育の経営と戦略
―持続可能な個人の発達と地域の発展のために―

山田正行*1

1.はじめに―理念や政策の推移―

 社会教育の考えや実践は戦前からあり、それは生涯教育に通じるものであった。このことは、1965年、ユネスコで「生涯教育」が提唱されると明瞭になった。今日、社会教育と生涯教育・学習がともに使われている所以である。
 その後、高度経済成長が高学歴化をもたらし、また自主性の尊重や意欲(やる気)の重視などで学習への意識が高まる潮流において、1984年に内閣総理大臣(当時は中曽根康弘)の諮問機関として設置され臨時教育審議会は教育改革にむけて「生涯学習体系」を提唱し、翌1985年、ユネスコは「学習権」宣言を発表した。
 この二例に見られるとおり、日本には先駆性がある。
 次に「生涯学習」を「教育改革」の角度から考える。「生涯学習体系」は受験教育など詰め込み教育ではなく主体的な学習を提起し、入試で一生の評価が決まるのではなく生涯にわたって再挑戦できるように考えられていた(学歴ではなく実力で評価)。そして、臨教審はこの他に、個性重視の原則、国際化、情報化等変化への対応を提起した(四つの答申を提出して1987年に解散)。
 このような「教育改革」は「行政改革」と連動していた。後者では行政における民間活力の活用(民活)が推し進められ、これにより公共性と私事性という区分を超えたNPOなど第三セクターの役割が大きくなり、経営がより重要視されるようになった。営利を求めるというのではなく、必要な収益をあげながら施設や事業を持続可能にすることが求められた(たとえ制度化されても赤字が累積すれば続けられない)。それには積極的な努力が必要だが、それを負担と感じるか、自分の力が発揮できる機会と受けとめるかが問われる。
 これを踏まえて臨教審以後の教育改革についてみると、1987年8月、教育改革実施本部が設置され、同年10月、「教育改革推進大綱」が閣議決定された。1988年7月、文部省は社会教育局を改組して、生涯学習に関する企画調整を行うため新たに生涯学習局を設置した。
 昭和から平成への改元の後、1989(平成元)年4月、中央教育審議会が再開され、答申「生涯学習の基盤整備について」が提出され、また翌年8月、社会教育審議会が改組され生涯学習審議会が発足した。同年には生涯学習振興法が制定された。
 これらを通して生涯学習推進体制が全国の自治体で進められた。ただし、生涯学習の振興や推進とはいえ、戦前の教化体制や国民精神総動員運動とは異なり、自治体が直接事業を行うのではなく、生涯学習の情報提供、この学習情報を学習者が活用し易くするための学習相談など条件整備(教育基本法第10条)が基本に据えられていた。
 21世紀になり、2001(平成13)年1月6日、中央省庁再編により文部省と科学技術庁を廃止・統合して文部科学省が設置された。
 2003年、指定管理者制度が始められ(6月13日、地方自治法の一部改正・公布、9月2日、施行)、法制度による官僚的統制(お役所仕事)ではなく、第三セクターによる住民のニーズに応じた経営が求められるようになった。
 また20世紀後半から提起された「日本再生」、「教育再生」の動きの中で、2006年12月15日、教育基本法が全面改定された。その第3条には「生涯学習の理念」が謳われている。
 文部科学省はさらに「教育改革」を推進すべく、2018年10月、教育分野の筆頭局として政策の企画立案・基盤整備など担う「総合教育政策局」を設置した。
 そして現在、社会教育主事養成のカリキュラムの見直しが進められている。社会教育主事に加えて「社会教育士」の養成も打ち出されている。その中で社会教育主事講習では「社会教育経営論」、「生涯学習支援論」という科目が新設される(大学の養成課程では「実習」も)。文科省のサイトなどに基づき、「社会教育経営論」、「生涯学習支援論」の内容についてみると、主に「経営」は地域づくり、「支援」は人づくりに対応する。前者で多様な事業主体と連携・協働を図りながら、学習成果を地域課題解決等につなげていくための知識や技能を習得することが、また後者では学習者の多様な特性に応じた学習支援に関する知識や技能の習得が目指されている。具体的には、以下の事項が挙げられている。

<社会教育経営論>
・社会教育行政と地域活性化
・社会教育行政の経営戦略
・学習課題の把握と広報戦略
・社会教育における地域人材の育成
・学習成果の評価と活用の実際
・社会教育を推進する地域ネットワークの形成
・社会教育施設の経営戦略等
<生涯学習支援論>
・学習支援に関する教育理論
・効果的な学習支援方法
・学習プログラムの編成
・参加型学習の実際とファシリテーション技法等


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